■恒星の出没時刻の計算
これまでの考え方で、特定の地域の恒星の出没時刻が計算できます。
赤道座標→地平座標の変換式(3)のh=0°と置いた場合。
0 = sinψsinδ+cosψcosδcosH0
cosH0 = - tanδtanψ
ここでのH0は、天体が出現して南中する、または南中して没する時間を恒星時間で表したものです。
地平線上付近にある星は、空気の屈折により浮き上がって見えます。
これを大気差と呼びます。この角度は高さ0°(h=0°)において約35'です。
この角度だけ、恒星時を補正する必要があります。この時角を僣とすると。
僣=R/(cosψcosδsinH0)
R:大気差 35'
ψ:観測地の緯度
δ:恒星の赤緯
H0と僣がわかると恒星が出没する恒星時は以下となります。
恒星が出現する地方恒星時= α - h0 - 僣
恒星が没する地方恒星時 = α + h0 + 僣
この恒星時を、求めたい日付の時刻に変換すればOK。
恒星が出没する方位A0
sinA0 = -cosδsin(±(h0 + 僣))
cosA0 = sinδ / cosψ
±(h0 + 僣):出現時刻 − 、没時刻 +
■例題
2000年1月1日の京都(経度:東経135°44'、緯度:北緯35°01')におけるシリウス(赤経:6h45.1m、赤緯:-16°43')の出没時刻、出没時の方位
cosH0 = - tanδtanψ
= - tan(-16°43') x tan(35°01')
= - (-0.30033) x 0.70064
= 0.21042
H0 = 77.853°
= 5h 11.4m
僣 = R/(cosψcosδsinH0)
= 35/60/(cos (35°01') x cos(-16°43') x sin(77.853°) )
= 0.58333/(0.81899 x 0.95774 x 0.97761)
= 0.76072°
= 0h 3.0m
出現時刻(恒星が出現する地方恒星時)
α - h0 - 僣
= 6h 45.1m - 5h 11.4m - 0h 3.0m
= 1h 30.7m
2000年1月1日0時UTにおけるグリニッジ恒星時
2000年1月1日0時UTの準ユリウス日。理科年表より。計算もできます。
MJD = 51544.0
θG0 = 24hx(0.67239+1.00273781x(MJD-40000.0)) = 6.6640h
(0.67239+1.00273781x(MJD-40000.0))の少数点以下のみ使用。
6.6640h = 6h 39.8m
2000年1月1日0時UTにおける京都の地方恒星時
京都の経度 東経135°44' = 9h 2.9m
θ0 = θG0 - λ
= 6h 39.8m - (-9h 2.9m)
= 15h 42.7m
恒星が出現する地方恒星時を世界時UTへ変換
1h 30.7m=1.5117h
15h 42.7m=15.7117h
1.5117h - 15.7117h = -14.200h
−(マイナス)になったため+24h
9.8000h
9.8000h / 1.002738 = 9.7732h
= 9h 46.4m UT
日本標準時(+9h)に変換
出現時刻 18h 46.4m JST
没時刻(恒星が没する地方恒星時)
α + h0 + 僣
= 6h 45.1m + 5h 11.4m + 0h 3.0m
= 11h 59.5m
恒星が没する地方恒星時を世界時UTへ変換
11h 59.5m=11.992h
15h 42.7m=15.712h
11.992h - 15.712h =-3.72h
−(マイナス)になったため+24h
20.28h
20.280h / 1.002738 = 20.225h
= 20h 13.5m UT
日本標準時(+9h)に変換
29h 13.5m JST
没時刻 1月2日 5h 13.5m JST
恒星が出没する方位A0
sinA0=-cosδsin(h0 + 僣)
= -cos(-16°43') x sin(±(5h 11.4m + 0h 3.0m))
= - 0.95774 x (±0.98027)
= ±0.93884
出現時 0.93884
没時 -0.93884
cosA0 = sinδ / cosψ
= sin(-16°43') / cos(35°01')
= -0.28764/0.81898
= -0.35122
出現時
cosA0 − 、sinA0 + のため第2象現
A0=110.14°
没時
cosA0 − 、sinA0 − のため第3象現
A0=249.86°
北から東回り110.14°にて出現し、249.86°(北から西回り110.14°)で没します。
この方法で、日の出、日の入り時刻も求めることができます。この場合、地球の軌道要素から太陽の赤経、赤緯を求める必要があります。これは少し面倒ですが、次回説明しようと思います。
ちなみに日の出、日の入り時刻を求めるには、以下を説明する必要があります。
地平視差、視半径、ケプラーの方程式、惑星の軌道要素、日心直交座標、ベクトル定数
後、天文計算には、歳差、視差についての考え方が必要です。
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